神様修行はじめます! 其の四

坂本龍馬は近江屋事件で暗殺された。


新撰組の近藤勇は戊辰戦争に敗れて、刑場で斬首。


沖田総司はその2か月後に、若くして病死。


土方歳三は函館戦争で戦死した。


西郷隆盛は、けっきょく明治政府と決別。盟友だった大久保利通が差し向けた政府軍に敗れ、自害した。


・・・っていう、わりとみなさん非業な最期の歴史的事実なんですが・・・。


な、んか、ことさらそれを主さんに説明する気になれず・・・。


「みんな、その、寿命で・・・」


「・・・ふうん。そうかい。そうなんだろうね」


なぜか、あたしの心の内を全て見透かしたような。


そんな納得した様子で主さんはうなづいた。


「あいつらは全員、同じものを見ていながら、全く違うものが目に映っていたんだよ」


「・・・・・・・・・・・・」


「だからそれぞれ、信じる物も生きる形も違ってしまったのさ。そりゃまあ、当然だけどね」


「主さん・・・」


「それにしたって、人の命ってのは儚くていけないねぇ」


主さんはうつむいて、ホウッとこぼれる様な吐息を小さく吐いた。


・・・・・・主さん、そんな・・・・・・


そんな、絹糸と同じこと言わないでよ。


そんな寂しそうな声でさ・・・・・・。


「さ、無駄話は仕舞いだよ。みんなさっさとお歩き」


気を取り直したように首を持ち上げ、スルスルと先に進む白く美しい姿。


でもやっぱりそれは・・・どこか悲しそうに見えてしかたなかった。

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