神様修行はじめます! 其の四

「なんで浄火ばかりひいきするんだよ!?」


「・・・・・・・・・・・・」


「おれは実の孫じゃないか! 血の繋がった実の孫が、可愛くないのかよ!?」


戌亥が泣きそうな声で、必死に長へ訴え続けている。


「おれのどこが浄火に劣っているんだよ!?」


「・・・・・・・・・・・」


「だめな所があるなら、教えてくれ! ちゃんと直すから!」


「・・・・・・・・・・・・」


「おばあ様、おれを見捨てないでくれよぉ! 頼むから!」


もはや半泣き状態の戌亥と、なにを言われても無言を貫く長。


なんか祖母と孫のケンカっていうより、女に捨てられる寸前の男の懇願みたいになってるけど・・・。


戌亥の心境も、ちょっとは理解できる。


実の孫を差し置いてまで、わざわざ別の人物を次の長に指名する。


それはつまり、『浄火に比べてよほどお前が劣っている』って宣告されてるに等しいわけで。


しかも、逃げ場のない狭い村社会の中で。


・・・・・・そりゃあ立場がないだろう。


必死になって自分を追い詰めちゃうのも、分かる気はするんだけど。


「戌亥よ、何を言われても答えはひとつだ」


かたくなに無言のままだった長が、ようやく重苦しい声を出した。


「私は、お前ではなく浄火を選んだ。それだけだ」


「・・・・・・!」

< 427 / 697 >

この作品をシェア

pagetop