神様修行はじめます! 其の四

すぐに扉がバタンと閉められた。


お岩さんの両腕が、かばう様にあたしの体を包み込む。


「セバスチャン、出してちょうだい」


指示に従い、セバスチャンさんが手綱をパシッと鳴らして牛車を動かす。


ガラガラと音を響かせ、車輪が急速に回転し始めた。



窓の外に、見送ってくれている凍雨くんたちの姿が見える。


あたしを見る、その気遣わしげな表情。


そして困ったようにチラチラと、視線を後ろに向けた。


みんなの視線の先には・・・



門川君が、茫然と立ち尽くしていた。



「天内君!」


あたしの名前を呼んでいる。


あたしに振り払われた手を、こちらに向かって差し伸べながら。


メガネの奥の綺麗な目が、困惑と疑問に満ちていた。



彼はあたしを追うように駆け寄ってきたけれど、牛車は止まらず進む。


あっという間に、あたしたちの距離は離れていった。


門川君の姿が見る間に遠ざかっていく。


まるで、置き去りにされるように。



小さくなる彼の姿が、頼りない幼子のように見えて胸がズキリと痛んだ。


あたしは涙で潤む目で、その姿を見つめる。


悲しい気持ちに混じって、彼への強い罪悪感が湧き上がってきた。



罪悪感? 悲しいのはあたしの方だ。


あたしの方なのに・・・・・・。



痛む心を抱え、すすり泣きながら、あたしは門川君を見つめ続けた。


牛車はスピードを上げ、門川君を置いて、前へ前へと進んでいく。


彼の姿が、どんどん、どんどん小さくなっていく。


その寂しげな姿を、あたしは目を凝らして見つめ続けた。


でも、すぐに・・・


彼の姿は、あたしの眼には見えなくなってしまった・・・・・・。



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