神様修行はじめます! 其の四

「なれなれしいのよ! あんたは!」


自分で自分が悔しくて、力を込めて手を振り払おうとした。


でも浄化は、あたしの手を強く握って絶対に離そうとしない。


そのまま軽い足取りでどんどん前へ進んでいく。


そして嬉しそうな顔であちこちの景色を眺めていた。



「綺麗な桜だなあ。あれ、桜でいいんだよな? 梅じゃねえよな?」


「あんた、梅と桜の区別もつかないの? それでも日本人?」



自分の事は思い切り棚に上げてバカにしてやった。


それでも浄火は怒る様子もなく、のんびりしている。



「だってオレ、梅も桜も生まれて初めて見るから」


「はあ? どんな僻地の出身よ」


「だから、常世島だよ」



・・・・・・あぁ。


そういえば、あの時マロさんが説明してくれてたっけ。


うば捨て山みたいな島。


罪も無いのに島流しにされてしまった、可哀そうな人たちが身を寄せ合って生きる場所。



「・・・ねぇ、そこってどんな島?」


「寂れた島さ。つまらない所だ。オレの両親もとっくに常世島で死んだし」


「そ、そう・・・」


「あの島には活気も無いし、楽しみも無い。喜びも無い。なにも無い」


「・・・・・・・・・・・・」


「まあ・・・それもしかたないけどな」



浄火の声が、陰りを帯びる。


そしてそのまま沈黙してしまった。



島の出身ってことは、浄火は常世島で生まれ育ったんだろう。


浄火の言う『なにも無い』島から、たぶん一歩も出ることも叶わずに。


たまたま自分の親に、神の一族の能力がなかったって理由だけで。

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