泣きたい夜には…~Hitomi~



向井先生とは過去のこと。


だからやましいことなんて何もない。


なのに何故か緊張してしまう。


奥さんはにこやかな笑みを浮かべて、


「あの……少しお話、よろしいですか?」


え……


お話って?


私と差しで話をするということは……


やはり向井先生のこと?


まさかその笑顔の裏側で私と向井先生のことを疑っているとか?


ぞくりと背中が冷たくなる。


さすがの私も患者相手に修羅場だけは演じたくない……。


ううん、患者じゃなくても勘弁ですが……。


幸運にも談話コーナーが空いている。


その方が人目につくし、何かあった時には申し開きができる。


私だって命も仕事も失いたくない。


脳内入り乱れての葛藤の結果。


「では、あちらでお伺いしましょうか?」


談話コーナーを指すと、奥さんは笑顔のままゆっくりと頷いた。



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