NENMATSUラプソディ

2

　高級車というのは、スルーっと動くんだなこれ、と新たな発見をしている場合ではなかった。

　どこに連れて行かれるのか……。　

　もしや、この前のはやはり前哨戦で、これから私はお店に連れて行かれ、嘘みたいに高いシャンパンなんかを買わされるのだろうか……。

　鬱々とした気分で窓の外を眺める。

　師走の忙しい街並み。私一人だけが時空のはざまに連れていかれようとしている。

　そうだ。何はともあれお金だ。

　世の中はお金で大半は片が付くものだ。
　もしこのままお店に連行されて使わなければならない場合幾らまで出せるか、私は脳内で預貯金を計算した。そろばんの技術がこんなところで役に立つとは。

　法外な金額を要求されなければ、とりあえずしのげそうだ。

　私は頭の中のそろばんをじゃらじゃら言わせる。

　よし、私もいい年をした女だ。ここは一つ大きく構えて、人生こういうこともあるものだと勉強しようじゃないか！

　私がいつまでもうつむいているのを気にしたのか、ホスト氏はこちらを覗き込んでくる。

　「大丈夫？車弱いとか？」

　車ではなく、あなた方の世界に困惑しておるのです！とは言えない。

　「大丈夫だよ、ちょっと……」
　「ちょっと？」

　そろばんはじいてたんじゃい！

　「会計の事をちょっと」
　「仕事、会計なの？」
　「ははは、まあそんな感じ」

　そう言うと、納得したようなそうでないような中途半端な顔で運転を再開した。
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