NENMATSUラプソディ
視線を伏せてどうしようかと次なる作戦を練っていると、掠れるほど弱められな声が耳に落ちてきた。

 「優菜さ、俺の事本業のホストだと思ってた?」

 はっとして顔を上げれば、ホスト氏は大きく息を吐いた。

 「ホストだから遊んだの?」

 「……え?」

 何だか傷ついたような顔をしたホスト氏がこちらを見つめてくる。

 「ホストならあとくされないって、そういう扱い?」
 「え、何言って」
 「ホストじゃないから、面倒だから逃げようって?ただの学生じゃ金持って無さそうだしとか?社会人でもないしまともに付き合えないって?」

 睨みつけられるような強い視線でそう言われて、私もなんだか腹が立ってくる。

 「ホストじゃないからって、っていうか、逆にあなたがホストじゃなかったら、私とデートするとかってどんな意味があるのよ!普通に考えて、私なんてぱっとしない、男慣れしてないような馬鹿な女なんて、お金巻きあげよう思われてるとしか考えられないでしょ、そりゃ逃げたくなるでしょ!」
 「……客と個人的にデートなんかしないし。そもそも客となんか寝ないし」
 「そんなの……知ってるわけないじゃん」

テーブルに置かれたコーヒーはどんどん温度を手放していった。私はその湯気の行く先をただ見つめる。

 「じゃあ何のつもりだったの。どういうつもり?」

 私が湯気に向かってそういうと、ホスト氏は私の手を握り、がたんと音をたてて立ち上がった。

 「ちょっと!」

 そのままぐいぐいと引っ張られ、彼がレジで適当にお札を置いてそのまま外に出る。


 師走の19時はもう真っ暗で、すれ違う人も普段よりずっと少なかった。頬を差す冷たい風も、引っ張られる手も痛い。
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