【完】キミと生きた証
「あ。そうだ。瞬、これいる?数1の問題集。夏休みの課題だったんだけど、あたしもう使ったから、よかったら使って。」
お母さんに持ってきてもらった問題集。
あたしは問題集に書き込みは一切しない派だから、中は綺麗だよ。
「さんきゅ。助かる。へぇ、勉強って直接書き込まねえのか・・・。」
「あたしはノートにやってるよ。」
「なるほどなぁ・・・。」
問題集に書いてあるのは、背表紙の名前、霧沢ちとせの文字くらい。
瞬はその文字を見つめてた。
「霧って字、難しいよな。」
「画数多くて面倒だよね。だから”ちとせ”ってわざと平仮名にしたんだって。お父さんの気遣い。」
くすっと笑うと瞬も少し笑った。
「ちとせって、もし漢字にしたらどう書くんだ?」
「1000歳ってかいて、千歳って書くのがよかったみたい。簡単な才じゃなくて難しい歳ね。千歳空港の字。」
「そりゃたしかに、画数多くなるな。」
「長い年月を生きるって意味でつけたんだって。生まれた時から死にかけだったから。」
「へぇ・・・。千歳・・・か。」