【完】キミと生きた証
俺の沈黙を、ちとせがくすりと笑った。



「そんな顔しないで。もしもの話・・。」



「・・・医者には、絶対なる。」



「そっか。」



そう言って俺の手を解放した。


嬉しそうな顔で、俺に笑いかけるちとせは、息をひとつ吐いて、目を潤ませた。





「もうすぐ・・・18歳になる。」


「うん。」



俺を見上げる瞳に、少しずつ涙が溜まっていく。




「あと・・・2年。ごめん・・ね?26歳まで生きること、できなかったら・・ごめん。」




泣きそうな顔で笑うから、俺はちとせを抱きしめた。



俺の胸の中、ちとせの声がこもる。




「お願いが・・あるんだ。2つ。」



「なんだよ?」



そう聞くと、ちとせは深呼吸してから、俺を見つめた。



「もし、あたしが死んでも・・。この優しい手で、誰かを・・助けてあげて。お医者さんになって、誰かの希望の光に、なってあげてほしいな。」



俺の手のひらを両手で包んだ。

ちとせは愛しそうに、俺の手を抱きしめてる。



「あと、もうひとつは。瞬を一番幸せにしてくれるひとと・・・幸せになって、ほしい。」




涙目のちとせは俺をみつめる。



「・・・お願いごと、聞いてくれる?」



大好きなちとせからの願い事なら、叶えてやりたい。


けどその前提がちとせの死なんて・・。


絶対・・・頷かなきゃなんねえ願いだけど、絶対嫌だ、そんな前提は。



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