私の王子様を見つけました
その日の撮影は外だった。



車で向かった先は避暑地で、氷室拓斗の別荘らしい。



さすが社長だわ。



ますます遠い存在になる。



今は何も考えずに撮影に集中しよう。



秋だけど外はかなり肌寒くて、中々ガウンが脱げない。



寒さに体が震え、思う様にポーズが決まらなくて。



「駄目だ。取り直し。」



外にある白いベンチに横たわれというけど、冷たくて震えてると、氷室拓斗がカメラを持って近づいて来た。



「カメラを見ろ。」



驚いてカメラを見ると、氷室拓斗がその場に腰を下ろした。



「そのまま立ち上がって、カメラに向かって歩け。」



訳が分からず、冷えきった体を自分の両手で包み込んで、氷室拓斗に向かって歩いた。



氷室拓斗が待ってるみたいな錯覚を起こして、微笑みながら歩く。



もう少しで氷室拓斗に近づけるけど、でも、氷室拓斗が消えた。



近づくと、氷室拓斗は消えてしまう。



カメラを見つめると、涙が溢れた。



氷室拓斗のOKの合図が上がる。



「加納さん、最高に素敵でしたよ。」



三枝木美奈さんの声で、撮影が終わった事を知った。



もう放心状態で、何が何だか分からない。



だだ、カメラを持った氷室拓斗を見つめていただけなのに。



午前の撮影は終わった。



そう思ったら、又お腹が鳴るし。



暖かいラーメンが食べたいな。



















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