ツンデレくんに出会いました。
目が覚めて、壁の時計を見ると、12時を回っていた。
時計が家のものじゃない。あたしが今いるこの部屋も、毎日いる実家じゃない。
閑散とした部屋だった。

「あ、起きた」

駿哉が濡れた頭をタオルで拭いて現れる。
頬が紅潮して、眼鏡をかけて真っ黒なスウェット姿の駿哉は、さっきより艶っぽく見えた。
風呂上がりと推測するのは、回らない頭でも容易で、ごくりと唾を飲み込む。
大人なので、抱き着きたい衝動を抑えた。
わずかに鈍い痛みが残る頭で、記憶を辿る。

「記憶、ある?」
「本当にごめんなさい」

やってしまった。

「ごめん。ベッド借りちゃって」
「別に」

ベッドから下りて、さっき床にぶん投げた記憶がある鞄の中からスマホを取り出す。
土曜日の0時41分。

「終電行っちゃった…」

がくりと力なくうなだれた。
タクシー呼ぶかな。ここから歩いたら2時間近くかかるだろうし。ああ、出費が痛い。

「泊まってけば」
「…いいの?」
「帰る方法ないんなら仕方ないやろ。付き合ってた頃、俺も散々泊まってたし」
「…嫌じゃない?」
「どうせ土曜やし、休みやろ」
「うん…ありがと」
「風呂入る?」
「…じゃあ」

駿哉が押し入れからグレーのスウェットの上下を引っ張り出して、あたしに押し付ける。

「お風呂いただきます」
「ん」

洗面所でスウェットを顔に近づけると、やっぱり駿哉の匂いがした。
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