白い月~夜明け前のその空に~
彼女のスレンダー体系で色白な肌は、暑い日差しの中の眩しい錯覚か、より儚げに映る。
陸の視界を掠めていく、いつかの面影…。
風になびく生まれつきの茶色がかった髪。
細い腕が、足が、白くぼやけ消えていく…。
ずっと後ろ姿のままで。
こっちに気づいて振り返る気がした。
胸がドクンと高鳴る。
『…っ、ま、』
「これって、クラスTシャツのだよね」
「…あ、ああ。わりい。ありがとう」
振り返って陸に用紙を手渡した彼女は、彼が思い浮かべた人物とは違う人。
彼女は陸と同じクラスの小柳 栞(おやなぎ しおり)だ。
「何か意外。相園君て、こういうそそっかしいこと絶対しなそうに思ってた」
そう言われて陸が思わず真っ先に思い浮かべたのは、プロ級のそそっかしさを持つ優月の顔だった。