白い月~夜明け前のその空に~

彼女のスレンダー体系で色白な肌は、暑い日差しの中の眩しい錯覚か、より儚げに映る。



陸の視界を掠めていく、いつかの面影…。





風になびく生まれつきの茶色がかった髪。


細い腕が、足が、白くぼやけ消えていく…。


ずっと後ろ姿のままで。




こっちに気づいて振り返る気がした。




胸がドクンと高鳴る。




『…っ、ま、』




「これって、クラスTシャツのだよね」


「…あ、ああ。わりい。ありがとう」



振り返って陸に用紙を手渡した彼女は、彼が思い浮かべた人物とは違う人。

彼女は陸と同じクラスの小柳 栞(おやなぎ しおり)だ。



「何か意外。相園君て、こういうそそっかしいこと絶対しなそうに思ってた」





そう言われて陸が思わず真っ先に思い浮かべたのは、プロ級のそそっかしさを持つ優月の顔だった。






< 55 / 465 >

この作品をシェア

pagetop