白い月~夜明け前のその空に~
「絶対にしないなんて、ないよ。うっかりすることは誰にでもある」
受け取った用紙を素早くノートに挟み、ベンチに置いてあったバッグを掴んで、校舎の方へ歩き出す。
「いつもここにいるの?」
まるで手を掴むように後ろから聞こえた、小柳栞の声。
圧力的ではなく、反射的に発せられた声は、どこか心細そうな色を感じた。
「そうだけど…」
「一人で…?」
「ああ」
「そうなんだ。もしかして秘密の場所だった?…だったら、ごめん」
半分体を後ろに振り向かせながら答えると、下がり眉が特徴的な彼女の眉がもっと下がり、後悔に満ちた表情。
「いや、別に。ここ通った時、たまたま誰もいなかったから、何となくいるようになっただけだよ」
「…はぁ。そっか。何か勝手に邪魔しちゃったかなって。余計なお世話だったかと」