結びの魔法
第二章 動き出した魔法
「『一』だな!?」

「ええ!?」

僕ら二人は仰天した。普段の秀ならこの位置は絶対に見えない。けど今は、一瞬でずば

りと当てて見せた。

「秀!目が・・・見えるようになったのか!?」

僕は勢い込んで聞いた。秀も驚いたような嬉しいような顔をしている。

「ああ・・・、お前らの顔までしっかり見えるぞ!」

「先生!あれなんなんですか!?」

陽が食いつくような勢いで先生に聞いた。先生はにこにこと笑っていて、なかなか答え

てくれなかった。そして痺れを切らした陽が口を開こうとした瞬間に言った。

「あれは『めがね』というんだよ。」

「「「めがね・・・。」」」

三人はそのはじめて聞く名前をそれぞれかみ締める。不思議な響きがする。

「すごい!廊下はこんなに古いものだったのか!空はこんなに青かったのか!!そして

先生が何より輝いて見える!!」

秀は嬉しさのあまりに詩人みたいなことを言っている。

「秀、よかったな。でもこれどうしたんですか?」

僕が聞くと先生は手に持っていためがねケースを出し裏返した。そこには何か漢字で書

いてある。

「たなか・・・のべ・・・ご・・・?」

陽が一生懸命それを解読する。しかし努力もむなしくはずれてしまった。そこには『田

中 伸吾』と書いてある。それは先生の名前だった。

「これ、先生の名前ですよね?あの『めがね』は先生のなんですか?」

陽が聞くと先生は遠い過去を思い出すようにめがねケースをなでた。もともとは綺麗な

深緑色だったのだろうが長い月日を経て色あせてしまっている。それにところどころ壊

れてしまっているし、傷だらけだ。そのことからそれは先生が長年愛用して物だという

ことが分かる。

「これは昔私が使っていたものさ。今はもっと目が悪くなっているから・・・。いや、新し

くしたんだよ。」

先生は何かを言いかけて、言い直してしまった。たぶん僕らには言っても分からないこ

とだったのだろう。

「だから、それは君に上げるよ。少し傷がついていて悪いがね。」

秀のかけているめがねには本当に少し傷があるだけで後は新品のように綺麗だった。

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