佐々倉のカノジョ。

信じる



商店街を抜けて、少し行ったところのアパートが、嵐くんの家だった。


私の家から15分ぐらいかな。



二階の103と書かれた部屋の前で、和哉くんが声をかけた。


「おーい!和哉くんが来てやったぞ~っ」


……和哉くんたら…。


ほどなくして、ガチャ、と扉が少しだけ開いた。


「なんだ、珍しいな」


ボソッと和哉くんがそんなようなことを呟いたけど、私は嵐くんの様子が気になって気が気じゃなかった。


「……なんで璃乃がいるんだ?」

「璃乃ちゃんが来たいって」

「んじゃお前帰れよ」

「は!?ひでぇなこのやろ!!」


……なんで出てこないのかな。

顔が見たいよ。


「璃乃ちゃん~、嵐がひどいから帰ろっか?」


急に扉の向こうから手が伸びてきて、中に引き込まれる。


「え、ちょ、はわっ!」



「お前だけ帰れ」


カチャ、ガチャン。


私を中に引き込むと同時に扉を閉めて、鍵まで閉めてしまう嵐くん。


「おいこんにゃろ!璃乃ちゃんになにする気だ!!」




顔……見たいとは、思った、けど…。


近…すぎない?


閉められた扉に背中を押し付けられて、最近流行りの壁ドンみたくなってる。


しかも、めっちゃ距離が近いです。


これ、顔上げたら目の前に嵐くんいるよね?


えっと……、どうすれば……。


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