不機嫌なアルバトロス
「お昼、これからですか?」
少しの間の後、彼が時計を見ながら訊ねるので、戸惑いながら、そうですと頷いた。
「…私もまだなんですが、良かったらご一緒しませんか?」
「―へ?」
自分の聞き間違いかと耳を疑った。
「この近くに良いお店があるんです。男一人というのも味気ないので、ご都合が合えば。」
どうやら、聞き間違いではなかったようだ。
ふわり微笑むその顔は反則だろう。
「…いいんですか、私が行って…」
思っても無い驚きの展開だが、さすがに躊躇われる。
だって、こういうの、アリなの?こんなにトントンと物事進むものなの?
「勿論です。ご不便をお掛けしたお詫びにご馳走しますよ。」
いやいや、貴方は何も悪くないだろう。
ぽかんとする私を見て彼は言った。
「そうだ、自己紹介がまだでしたね。失礼しました。私の名前は中堀 空生(なかぼりあお)と言います。」
本当にボケてるけど、そう言われて初めて、私は彼が来訪者だったのだと気づいた。