不機嫌なアルバトロス

「…はい」


素直に出てきてしまった承諾の返事に、目の前の彼は満足そうに笑って、踵を返した。


その後をついていく、意志薄弱な自分。


今、私どんな顔しているかな。


たぶん、真っ赤だ。


自動ドアを抜けるまでの間が、長く感じられた。


人の目が気になる。


きっと、昨日男と別れたばかりなのに、もう違う男連れてるって噂が、夕方までには広まっているだろう。


もうこんな会社辞めちゃおうかな。


そしたら全部リセットされないかな。


そしたら、、


この男(ひと)と向き合えるかな。


既に奪われかけている心。


……いやいやいや。


浮かんだ思考にはっとする。


すぐにそっちに考えちゃう私がいけないんだ。
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