不機嫌なアルバトロス
呆然としている私を見て、藤代くんはくすくす笑う。



「貸して。手伝ってあげる。」




「あ、でも…」




「だから、飲み会は参加してね。俺今回幹事でもあるんだよね。」




舌を小さくべっと出して、藤代くんは私の机の上の書類をごっそり手に取った。





他には、誰も居ないオフィス。



藤代くんは自分の席に戻る。





「お昼、は?」




慌てて目で追って訊ねると、藤代くんはこちらを見て、片手に10秒チャージのゼリーを掲げた。




「これで済ましたから、平気。」




「それで、、持つの?」




「失恋?」



心配して訊いたのに、逆に質問し返されて面食らう。



「な、何をっ、突然…」




「櫻田って顔に出るよな。最近大分マシになったけど、入社したての頃はひどかったよな。」





図星な上に、顔に熱が上ったことを自覚する。


学習能力のない私。




「そんなことっ、、ないもん…」




「…で、今回は何があったの。」




小さく口を尖らす私に、藤代くんは忙しなくキーボードを叩きながら、もう一度訊いてくる。


今回は、って。



同期だから、私のこれまでの噂もきっとよくご存知でいらっしゃることだろう。






「……言いたく、ない」



「あ、そう。」



「………」




あ、そうって。


そうやって言われるとなんか、後味悪いんだけど。




「やっぱり、やるよ、それ。」




私は立ち上がって、藤代くんの席にまで取りに行く。





「いいって。だから嫌だったことは夢にしちゃいな?」




「!?聞いてたの?」




「さあ?」



最悪だ。


独り言を聞かれるなんて。



藤代くんは涼しい顔しちゃってるけど。

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