不機嫌なアルバトロス
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「ほんと、随分早く終わったわよね。」
乾杯のビールをまだ飲みきれないまま、憲子の声に私はむせた。
イタリアンレストランを貸し切った会場は課の人たちでいっぱいになっている。
『俺が手伝ったことは、内緒ね』
後からそっと渡された出来上がりと一緒に、約束させられた。
そんな藤代くんの姿は、私の席から離れすぎもせず、かといってくっついてもいない所にある。
ちらっとその方向へ目をやると、偶然にも向こうとばっちり合った。
「聞いてる?」
慌ててぐるっと回した首を元の位置に戻す。
「花音ってば!」
「あ、うん。」
「はぁ、ほんと、立ち直りが悪いなぁ」
「ご、ごめん」
謝りながら不自然さを隠すためにビールをぐびぐび飲んだ。
そのまま、淡々と会は進み、清算を終わらせて他の人に続いて外に出る。
「二次会、どーする?」
憲子に聞かれて、私はふるふると首を横に振った。
「やめとく。明日も仕事だし。」
今夜はやけに酔う。
だけどどこかでシラけている自分がいる。
場の雰囲気についていくことができない。
「だよね…日にちの関係で週の頭になっちゃったけど月曜はないよねぇ。私誘われちゃってるから、ちょっとだけ顔出さなくちゃいけないんだけど…花音、ひとりで帰れる?」
「もちろん、そんな飲んでないし。」
「ごめんね。。元気、出しなよ?」
そう言われても返す言葉が見つからず、曖昧に笑って小さく手を振った。
「かの…」
「憲子ー!!」
私を見て何かを言いかけた憲子を呼ぶ声がする。
「ほら!呼んでるよ!早く行ってあげて」
背中を押すように言うと、憲子は少し迷って頷いた。
「また、明日ね」
「うん。」
ぱたぱたと走る憲子の後ろ姿を見送りながら、自分の吐いた白い息が空気に混じったのが視界に入った。