不機嫌なアルバトロス
「彼には他にも才能があったので、友人は彼を世界にのし上げてやる手助けをする代わりに恩恵を受けることなど、条件を決めることができました。ルールは二つ。」
そう言うと、燈真は立ち上がる。
「本当の名前は捨てることと、深入りしないこと。」
眩暈が、する。
薄く笑っている目の前の人間が信じられない。
「結果、彼は生きる理由を見出して、今幸せに暮らしています。めでたしめでたし。」
「そんなことないっ!!!!」
いつの間にか流れていた涙。
叫びと共に出た声。
立ち上がった身体。
私の内側から、やるせなさが、怒りが涌き上がる。
「―何が?」
燈真は相変わらず笑みを湛えたまま、首を傾げた。
「何がって…中堀さんはっ…」
「ストップ。」
言いかけた私の前に、大きな掌が出される。
「俺、言ったよね?これは世間話で、おまけだって。誰の話でもない、ね?」
「そんな…」
「さ、おまけの話はこれでオワリ。さよなら」
そう言うと、燈真は私に背を向けて、マンションのエレベーターホールに向かう。
「貴方に利用されただけじゃないですかっ」
その背に向かって、私はぐしゃぐしゃの声で叫んだ。