不機嫌なアルバトロス
「おーい」


そんな私に、再度声が掛かる。


「目ぇ、開けろ」


どうしよう。もう、確実だ。


降参して、私は恐る恐る瞼を開いた。


目の前には―


いつかの、


黒髪で、スーツを格好良く着こなしている、紳士。



もとい、冷酷非道な男。




「ど、して?ここが…」


掠れる声で、口をついて出た質問が、これだった。



「こねーな、と思って。こんだけ沢山の人間が忙しそうに行き交う中、柱の前で死にそうな顔して突っ立ってる女はお前しか居なかった。」



呆れたように、彼は答える。



「…すいません…」



私は益々小さくなるばかりだ。
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