不機嫌なアルバトロス
「とにかく、いくぞ」


そう言うやいなや、彼は未だ冷たい私の手を掴みパーキングの方へと歩き出した。


「うぉ、さみぃ」


丁寧な言葉遣いだった中堀さんが、少し乱暴な言葉を使うのに、いちいちドキドキする心臓を呪う。


それでも。


歩調は女の私にしっかり合わせてくれている所が、なんだか辛い。


女慣れしている―


そう思って傷ついている自分が悔しい。


しょうがないじゃない。


この人には、大事なカノジョが(多分)いるんだもの。


そういうことをしていい素材だもの。


私のモノには絶対に、なってはくれない。


手の届かない人だもの。
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