Betrayer-ビトレイヤー-~嘘に包まれた気高き彼女~
叩かれた頬を押さえながら、ゆっくりと顔を上げる。怒りで初めて感情を露わにした「千鶴」が、私を睨んでいた。
フッと、思わず笑みが零れる。
「なんだ、そんな顔もできるのね。無表情だから、顔に仮面でも付けてるのかと思ったわ」
「お前っ、いい加減に……」
その言葉にさすがに我慢の緒が切れたのか、亮が自分に向かって怒鳴りつけようとしたときだった。
「あなたは……亮を捨てたのよね?」
無機質な声がその場に響き渡る。
亮から改めて千鶴の顔を見る。もうそこに、先ほどまでの怒りの表情は浮かんでいなくて……
また最初のように、無表情な顔が私を見ていた。
それはまるで、自分を「人間」として見ていないようにも見える……軽蔑した目。