愛しくて壊しそう

8月の水際

【8月の水際】


プールに行こうと言い出したのは、断じてオレじゃない。
達夜だ。
タダ券もらったから行こうと誘われたのだが、はっきり言って男同士で行きたくない!
男の裸見て、何が面白いというのか。

チケットは4枚。
達夜の妹、優沙も行くとして…残るチケットは1枚。
誰を誘うかなんて決まってる。

男にプールに誘われたら、9割は気があると思っていい。
デートという名目で、下着に匹敵する水着姿。
これはおいしい。おいしすぎる。

今更女の裸でどうこう言うつもりはないが、水織は特別だ。

さすがにプールじゃ、少しは警戒されるかと思ったのだが…。

「プール? いいよ、行こう行こうっ」
 
誰かこいつに警戒心というのを教えてやってくれ…。

まあ…いいか。
オレが全部教えてやればいいんだ。
これから時間はたっぷりある。

良いことも悪いことも…全部オレが教えてやればいいじゃなか。

…うーん。
自分の好みの色に染められる女というのは、なんとも男心をくすぐられる話だ。
このあたりを、男が本能が嗅ぎつけてくるんだろう。
だから妙にモテるんだろう。

それに、あの儚さ。
守ってやりたいと思わせる。
男心をくるぐる言動も、自覚してないのがすごい。
 
まあオレが、そんなのを自覚してる女に魅かれるはずがない。

水織を…愛さずにはいられない…。


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