一つ屋根の下

今まで我慢していた涙が零れそうになる。

「濡れてんだからさ、ばれねぇし。だからさ、なんてゆったらいいかわかんねーけど」

懸吾は少し照れくさそうに、優しい声で続ける。

「泣きたい時は、泣いたらいいと思うぞ」

懸吾はそう言い残すと、早足でプールに戻った。

蒼空は溢れそうになった涙を堪えるように顔を冷水の水で洗うと、空を見上げて唇を噛んだ。

駄目だ。まだ、泣いてはいけない。

泣いたら終わりを認めたようだから、今泣いたら目が腫れて新しいお母さんに心配されてしまうから、だからまだ泣けない。

蒼空は運動場で汗を流すサッカー部を見ないようにして、プールサイドへ戻った。
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