一つ屋根の下
何も言わず小さく頷く蒼空に、愛が続ける。

「お母さんのことも、気負わないで、嫌だったら嫌ってゆうんだよ。蒼空なら大丈夫。がんばってこい!」

愛は蒼空の腰に回した手をほどくとにっこり笑って、走ってテニス部の子たちのところへ戻った。

「愛!」

唇を結んで瞳をうるませていた蒼空が叫ぶと、愛は振り向く。

「あーりーがーとー!」

青空に響き渡る済んだ声に、愛は手を振って答えた。

やっぱり愛に隠し事は出来ない。

一粒だけ頬を伝った涙はなかったことにして、蒼空は自転車に飛び乗る。

大丈夫、私なら頑張れる。

そう言い聞かせるようにペダルを踏むと、さっきより蝉の声が大きくなった気がした。
< 19 / 19 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop