一つ屋根の下
水が、夏の音を立てて跳ねる。
透明で涼しい筈の夏の音は、蝉の声を掻き消す程に激しさを増していた。
蒼空は、この瞬間が好きだ。
バタフライで、体を水の上に起こした後、水中に入る、その一瞬。
体を起こせば起こす程、水中で勢いがつく。
それが楽しくてまた、蒼空のバタフライは加速する。
この一瞬だけは疲れを感じないし、つらいことも忘れられた。
泳ぎたいという気持ちだけが、蒼空を動かしていた。