薄紅
「うん、もう大丈夫だよ。

病気とかじゃなくて、ちょっとだけ、

心臓が弱いだけだよ。」

そう言って、本棚に手をかけて立ち上がろ

うとする。

体重をかけられた本棚が軋み、ミシッと音

をたてる。

「あ……」

まだ本調子じゃないのか、少しよろけた

彼を、咄嗟に支える。

「ご…ごめん、ありがとう」

「……」

良く分からないけど、何だか妙に気まずく

て照れくさくて、無愛想に目を逸らしてし

まう。

でも彼はそんなことお構いなしに、

「本当にごめんね、迷惑かけちゃって。

僕は赤羽希生人。希望の希に、生きるで、

きいと。」

「私は……えっと……白石……真……

真実の真で……」

語尾に力がなくなっていく。こんな声

じゃ、白石しか聞こえなかっただろうな。

「白石真さんね。よろしく!」

なんか、すごく癒されるというか、

明るい笑顔でそう言われると、

私がきにしてるのも、馬鹿に思えてくる。

「……よろしく……!」

最後には、私の頬も緩んでいた。
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