いろはにほへと
「で、どこが俺の部屋?」





これは、俗に言う、人の話を聴かないで自分を押し通すという人種―。




どんなにはっきりと伝えても、一生伝わることがないという部類か。




ならば―。




「わかりました。なんと言っても、ここに居付くおつもりでいらっしゃるんですね…。それでは、条件があります。」




私もおもむろに立ち上がると、今いる囲炉裏のある部屋のすぐ隣の襖をスパン、と開いた。




そこは畳みの敷いてある茶の間で、でかでかと掛け軸が飾ってある。






「あちらをご覧下さい。」





スィッとその掛け軸を指すと、




「労さずして、、、住むべからず…?」




茶髪男が書いてある文字を読み上げた。





「ここの主、藤崎姫子さんの書です。私は貴方を世話する義務はありませんし、貴方が好きでは在りません。それでも居座るのでしたらこの家訓だけは守ってください。そうですね、まず手始めに―」






唖然としている茶髪男を余所に、私は顔を、荒れ放題の庭先に向ける。






「草むしりから、していただきましょうか。」


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