冷たい手
「うん。私は、お手伝いじゃなくて、ただ、一緒に。」
「一緒に、彼女として暮らします。」

少しの沈黙が二人を包む。

「すみません。迷惑ですよね。」
ミカがうつむいてしまった。

「彼女って、そんなアレじゃないですもんね。昨日あったばかりですもんね。」

ダイチはそれを見て、慌てる。
提案したのはダイチなのだ。ミカが謝ることはない。

「ミカ」
ダイチの口から、確かに”ミカ”という声が発せられた。

「ダイチ…」

「さん。」

ミカはさんを最後につけた、その初々しさに。二人は顔を見合わせて笑った。
お互いに、お互いの本当の笑顔を初めて見た。

「それで、いいだろ。りゆうなんて、いらない。」

ダイチは、ゆっくりと、自分の言葉を伝える。

「・・・でも。」

「おれは、それで、いい。」
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