現実は小説よりきなり




ああ、この上なく惨めだ。


楽しそうな家族、幸せそうな老人、無邪気な子供達。


自分だけが不幸に思えてくる。


スランプと言うのは、こんなにも辛いものだったのね。

第三者的に漠然と思った。



恋愛小説...経験した事もないのに、今まで書けてたのが奇跡だったのかも知れない。

そう思えて仕方ない。



「ああ、どうしたら良いんだろ」

空へと視線を向けた。

青い空の中を凪がれる白い雲。


私も何処かに流れてしまいたい。


「情けないなぁ、完全に現実逃避だ」

漏れたのは苦笑い。


人としてどうなの?

も、本当、やだ。



キャッ、キャッと無邪気にはしゃぐ子供の声が耳の届く。

少し早めのセミの声も。


無心になろうとしても、ここじゃダメだなぁ。

人の居ない場所なんてないよね。


ってか、一人になっても思い付く気はしないけどね。


情な...一人で笑った私は、きっと周りから見れば変な子に見えるんだろうなぁ。




「よぉ。なに変顔してんだよ」

の声も同時に頬に押さえ付けられた缶ジュースにピクッと肩を上げた。


「ヒヤァ...」

声のする方に視線を向けたら、そこには妖艶に微笑んだ琉希也君が居た。


「ククク...驚き過ぎだろ?」

なんて笑いながら私の隣へドンと座った。


いやいや、どうしてここに居るのよ?



「...る、琉希也君?ど、どうして...」

慌てて喋ったら舌が縺れた。


「落ち着いて喋れよ。たまたま歩いてるのを見掛けたんだよ」

「へっ?それでつけてきたの?」

そう言う事だよね?

見掛けたから、ついてきたって事だよね。


「おい、人をストーカー呼ばわりすんなよ」

と額を指で小突かれた。


「...ったぁ」

額を押さえて琉希也君を見れば、


「ま、これ飲めよ」

とさっき頬に当てられた缶ジュースを差し出された。



「あ、うん。ありがと」

「どういたしまして」

優しく微笑んだ琉希也君にドキッと胸が高鳴った。


な、なんだ?これ?

ドキドキするんですけど。


それを知られないように、貰った缶ジュースに視線を落としてプルタブを引き上げた。


隣でも同じ音がして、チラッと目だけを動かして見れば琉希也君は自分用の缶珈琲を手に持っていた。


「ん?こっちのが良いか?」

見てたのが見つかった。


「あ、ううん。これで良い」

開けた缶ジュースを見せてそれを口に運んだ。


< 123 / 123 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

Bloody wolf

総文字数/135,147

青春・友情142ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
あの日出会ったのは運命 赤を纏った貴方を見つけたのは私。 その瞬間に、カラカラと音を立てて回り出した歯車。 先の見えない不安を抱き抱えながらも、貴方の側で生きていく。 生死の境はどこにあるんだろうね。 ねぇ、私を愛してる? ねぇ、共に歩く事を願ってる? 飽き飽きとした毎日から、私を連れ去って。 踏み入ってはいけない場所へと・・・・・・。
闇の果ては光となりて

総文字数/155,830

青春・友情142ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
闇に包まれたその場所で出会ったのは、闇を飲み込んだ臆病な猫。 虚勢を張って強く見せるその姿に、自分を重ねたのは自然な成り行きだったのかも知れない。 【feral cat】 野良猫は野良猫でも、彼らは迷い猫ではなく、野生の獰猛さを隠し持つ。 大きな力で街を支配する彼らに、怖いものは無い。 寂しさに身を寄せ合うだけの野良猫には成り下がらないと、高いプライドと厚い誇りを胸に刻み付け、夜の街を爆走する彼らを、人は恐れながらも憧れた。 彼らのねぐらに一足踏み入れたなら、噛み付かれる覚悟を決めるがいい。 「猫みてぇ」 「煩い、猫はそっちでしょ」 「ククク···違いねぇ」 「何よ! 余裕ぶっちゃって」 「お前は猫は猫でも、怯えて自分を守る為に威嚇するkitten(子猫)だな」 「こ、子猫って子供扱いしないでよね」 「子供扱いが嫌なら、俺を誘惑してみせろよ」 愛を知らない私に狂おしい程の愛を教えてくれたのは貴方でした。
あの日あの時...あの場所で

総文字数/399,683

恋愛(キケン・ダーク)445ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
子供だったから、離れる事は避けられなくて。 貴方が離れていくのを止められなかった。 三年ぶりに会った幼馴染みは、極悪非道の最低男に成り下がっていた。 さよならせずに、一緒に居られたなら、貴方はあの無邪気な笑顔を失わずに済んだのだろうか? ねぇ?もう遅いかな? 私はもう貴方の隣に立つ資格はありませんか? 女の子を性欲処理の道具としか思ってない幼馴染み。 vs アメリカ帰りの美少女 vs 過保護に少女を守るナイト 三つ巴の恋は、何処へ向かうのか。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop