現実は小説よりきなり
崩れる普通

変化と異変









井上さん、改め美樹が居なくなった後も私に向けられた視線は無数で。


本当、肩身の狭い思いをした。


眞由美と可奈が深く突っ込んで来なかった事には感謝したけど。


とにかく、いたたまれない中、朝食を終えた私は自室に戻って学生鞄を手に取ると正面玄関へと向かった。



「二人ともお待たせ」

ドアを出て直ぐの所に眞由美と可奈の姿。


「ううん、待ってないよ」

あぁ、眞由美、優しい。


「じゃ、行こうか」

と可奈の声に三人で歩き出す。



「って言うか、足大丈夫?」

可奈に心配そうな顔で覗き困れる。

テーピングをしてるとはいえ、歩く時はどうしてももとないんだよね。


「あ、うん。テーピングしてるから全然マシなんだけどね」

二人には昨日のうちに、病院に行った事や足首が有り得ないほど腫れ上がってる事、ついでになぜか古沢君が病院についてきて寮まで送って貰った事を話してる。



「鞄持つよ」

と私の手から鞄を預かってくれたのは眞由美。


「ありがとう」

本当、良い友達だよ。


「肩に掴まっても良いよ」

「ん、ありがと、可奈。でも大丈夫」

掴まり歩きをしなきゃなんないほど痛みはないからね。


「ならいいけど、無理しないでよ」

「は~い」

と頷いて可奈に微笑んだ。


二人に挟まれるようにして通学路を歩く。

ズキンと言う痛みがないから、歩きやすい。



「って言うかさ、古沢君、井上さんに言ったんだね」

と眉を下げて苦笑いする眞由美に、


「うん、そうみたい。正直ありがた迷惑」

困り顔で溜め息をついた。


「井上さんって見た目より怖くなかったよね?嵐に凄く好意的だったしさ」

可奈の言うように怖さは無かったけどさ、周りの視線が痛すぎたよ。


「そうだね。あの調子じゃ、学校でも話しかけてきそうじゃない?」

怖いこと言わないでよ、眞由美。


「それは困る。私は普通に平和に過ごしたい」

肩を落として歩く私の肩を眞由美がポンポンと叩く。


「フフフ...嵐は本当に普通が好きよね?まぁそんなに肩を落とさないの」

「そうそう、眞由美の言う通り。なるようにしかならないんだし」

可奈のバカ、他人事だと思って!


「...うぅ..ヤダよぉ」

下唇を軽く噛み締めた。

目立って昔みたいになりたくなんてないんだよ。






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