現実は小説よりきなり
迫る地面。
さすがの私もこれを避ける術を知らない。
ぶつかったら痛いよなぁと思いつつ目を瞑った。
だけど、衝撃は何時までもこない。
その代わりに腰回りにグイッと回された誰かの腕。
ゆっくり目を開けた私の視界はぐらついていて。
ふわりと浮いたままの体を不思議に思い、自分の腰に目を向けた。
がっしりとした男の腕が私の腰をしっかりと支えてた。
どうやら、誰かが後ろから抱き止めてくれたらしい。
なんて解析をしてると背後から聞こえた来た声。
「あっぶねぇ。大丈夫か?」
「.....」
さっき、聞いたばかりのイケボイスがするのは気のせいか?
どうか、誰か違うと言って欲しい。
心臓が有り得ないスピードで脈打ってる。
何?このドキドキは...。
ほんと、勘弁して欲しい。
今日の私はついてない。
「おい、大丈夫か?」
放心してた私の耳再び聞こえてきた声にハッとなる。
「あ...だ、大丈夫です」
そう言うと、ゆっくりとその場に下ろしてくれた。
背後に立つ人間は間違いなく古沢君だろう。
ふんわりと香る彼らしい香水の香り。
あぁ、面倒臭い事になった。
一番関わりたくない人に助けられるなんて。
私は何時も話題の中心に居る彼が苦手だ。
接点もないのに毛嫌いするのは申し訳ないけど。
私とは正反対の位置に居る彼をどうしても敬遠してしまう。
「大丈夫か?怪我してねぇか?」
の声に、仕方ないと諦めて振り返る。
助けてもらってお礼も言わないのは流石に不味いからね。
「ありがとう。助けてもらったから大丈夫です」
笑顔の仮面を貼り付ける。
もちろん、彼と視線を合わせはしないけど。
「そうか」
古沢君は微笑んで私の体を解放してくれた。
ほっと胸を撫で下ろすと同時に、離れていった香りに少しだけ寂しさを感じたのは気付かない振りをする。
「嵐、大丈夫?」
「怪我してない?」
眞由美と可奈が階段を掛け下りてくる。
「あ、うん。大丈夫」
心配そうな顔の二人に笑って見せる。
「ぶつかってごめんなさい」
派手な化粧の女子が古沢君の隣に並んで、私に頭を下げる。
ああ、彼女にぶつかられて落ちたのか。