現実は小説よりきなり









派手な化粧をしてるわりに、本気で申し訳なさそうに眉を下げてる彼女に私は微笑む。


「あ、大丈夫だから、気にしないで」

顔の前で手を左右に振った。


「ほ、本当に?」

あら、自棄にグイグイ来るのね。

見た目が派手なだけで彼女はそんなに悪い子じゃ無いのかも知れないと思った。


「うん。彼が助けてくれたから本当に大丈夫よ」

古沢君を一瞥してから彼女にそう告げる。


「良かった。本当にごめんね。これからは階段で騒がない様にするね」

胸元に手を当てて反省してる彼女に、


「うん、そうした方が良いかもね。じゃ、私もう行くね」

頷いて微笑んだ。

今度は仮面の笑顔じゃない。


だって、彼女が心から謝罪してるのが伝わって来たから。



「あ、うん、バイバイ」

と手を振ってくれたので、私もバイバイと手を振った。



「助けてくれてありがとうございました。眞由美、可奈帰ろ」

もう一度古沢君にお礼を言って、背を向けて階段を降り始めた。


その途端にズキンと右足首に走った痛み。



うわっ...足首に痛めてる。

最悪だぁ。


一瞬しかめっ面になった顔を、隣を歩いてた眞由美に見られた。


だけど、此処は何もなかった様に去りたい。


あんまり古沢君達に関わりたくないからね。


「...嵐、足...」

と小声で私の右足首に目を向けた眞由美に、


「しっ...」

と目配せする。


眞由美は直ぐにそれを読み取ってくれて小さく頷いてくれる。



背中に視線を凄く感じるから、悟られない様に階段を降りる。

彼らの目の届かない所まで、どうか普通に歩けます様に。


ゆっくりと足を進めて階段を一階まで降りる。


マジで痛いんですけど。

しかも、右足首とか最悪だぁ。


だけど、今はここをやり過ごす事だけ考えなきゃ。



「嵐、手繋ご」

然り気無くそう言って私の手を引いてくれる可奈には感謝だ。


二人はやっぱり私の異変に気付いてくれるんだね。


後少し、後少し行けば古沢君達の視界から外れる。






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