心を全部奪って
「出会うのが、遅かったからいけないのよ…」


そう言った途端、ポロポロと涙が溢れた。


「彼の奥さんより先に出会えてたら。

そうしたら私、工藤さんと結婚出来たかもしれないのに…。

どうしてもっと早く出会えなかったの…?」


結婚なんて望んでないって、本当は強がりだったの。


いつも彼のそばにいる奥さんが、うらやましくて仕方がなかったの。


彼に料理を作ったり。


彼の服を洗濯したり。


同じベッドで眠って。


一緒に朝を迎える。


その妻の位置に、


私が行きたかったの…!


止め処なく涙を流す私を、霧島さんが苦しそうに見つめている。


言葉もなく、


しばらく見つめ合っていたら、


霧島さんの顔がゆっくり近づいて来て、


私の頬に霧島さんの唇がトンと触れた。


涙を拭うように優しく触れる唇は、


次第に耳へとなぞられていき、


気が付けば


甘く


熱く


首を愛撫されていた。

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