心を全部奪って
彼が入ったのは第一会議室。


朝一の会議はもう終わっていて、どの会議室も使われていなかった。


シンとした会議室。


心臓の鼓動がドクンドクンと音を立てるから、その音が聞こえてしまいそうで、そっと胸を手で押さえた。


霧島君は窓のそばに立っている。


私はその背中を見つめながら、黙って彼の言葉を待った。


「どうしてなんだ…?」


彼は窓の外を見ながら、呟くように言った。


「どうしてこの3日間、電話に出てくれなかった?」


思わずゴクリと喉を鳴らす。


そう。


私は結局、


霧島君に電話をすることが出来なかった。


チャンスが全くなかったわけじゃない。


ただ…。


その勇気が、なかったんだ…。

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