心を全部奪って
霧島という男
「はい、どうぞ」


カタンと、ローテーブルにマグカップを置く霧島さん。


「いただきます…」


中国茶なのだろうか?


ちょっと珍しい香りのお茶を口にしながら、目だけでグルリと部屋を見渡した。


なんかこう全体的に、オレンジっぽくて明るい感じの部屋だよね。


人懐こい彼の性格そのままっていう感じがする。


布張りの赤いソファーに腰掛けて、目を閉じている霧島さん。


必死に酔いを冷ましているのかな?


うーん。


この時間って…。


一体私、何をしていればいいんだろう。


まだつらそうだし、やっぱりもう帰ろう。


そこまで遅い時間でもないしね。


「き、霧島さん。

私、やっぱり帰りますね。

おやすみなさい」



そう言って、立ち上がろうとしたその時だった。



なぜか突然暗くなる視界。



頭がグラリと大きく揺れて。



ドンッと背中を強く床に打ち付けてしまった。
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