心を全部奪って
それが真実だろうと
その日の午後、


本社に衝撃が走った。


工藤課長の辞令が、社内掲示板に貼り出されたからだ。


「工藤課長が営業所に異動?」


「やっぱりあの子と不倫してたんだ」


「それなのに誘惑されたって言ってたんでしょう?」


「信じられない。

自分のことしか考えてないんだね」


「憧れてたのに、なんかガッカリー」


社内の人間はみんな、好き勝手に言いたい放題話していた。


だけど、同情の余地はないなと思った。




辞令が決まってからの数日。


工藤課長の表情は終始硬かった。


工藤課長と仲が良い、俺の元上司の栗原課長だけが、アイツのそばに付いていたように思う。


あれだけ皆に慕われていた工藤課長の姿は、もう見る影もなかった。


販売促進課で一応送別会が開かれたらしいけど、栄転って言うより左遷に近いし。


元気で頑張ってくださいって言うのが精一杯だったらしい。



そしてついに、



ヤツの本社勤務の最終日がやって来た。


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