心を全部奪って
これでアイツも見納めか。


そう思いながら、営業に出る前にチラリと販売促進課の方を見た。


工藤課長はと言うと、暗い表情で書類に目を通しているようだった。


同じ会社だけど、多分もう二度と会うことはないだろう。


さよなら。


心の中で呟いて、俺は営業に出かけた。






照り付ける太陽はまだまだ元気だけど、もうすぐ定時になるという頃。


俺は仕事を終え、会社に引き返していた。


今日はすげー暑かった。


真夏の営業って、スーツを着ている人間にはかなりきついものだ。


まぁそれでも炎天下で野球をしていた学生の頃に比べりゃ、全然ラクなんだけど。


そうこうしているうちに、エレベーターが会社に到着。


降りようとしたその時。



「あ…」



俺のすぐ目の前に



工藤課長が立っていた。

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