心を全部奪って
「ジタバタしたって無駄だ。

お前は一生俺の奴隷になるんだから。

いいか?

お前に拒否権はない」


「ど、奴隷…?」


ワケがわからずきょとんとしてしまう。


そうしたら霧島君が、突然プッと笑った。


その顔を見た途端、私も思わず吹き出してしまった。


なーんだ、冗談か。


ホッして、しばらくクスクス笑っていたら。


霧島君の右手が私の頬をそっと包み込んだ。


「手こずらせやがって。


でも。


そんなひまりが、


俺は大好きだ」


そう言うと霧島君は


ゆっくりと顔を近付けて


私の唇にそっとキスをした。


触れるだけの優しい優しいキス。


時折見つめ合っては


何度も何度も唇を重ねた。



こんなに幸せで安心出来るキスは、



生まれて初めてだった。

< 319 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop