黙れ、小高。
201号室
4月。
今日から、高校3年生。
とはいえ、まだまだ春休み真っ只中。
「ふぇっくしょおおい!あー…くそ、花粉なんか……くそっ!!」
今日何回目のくしゃみなんだろう。
くしゃくしゃに丸めたティッシュを、
向こうのゴミ箱に向かって、投げ飛ばす。
カサッ、と音を立てて、ティッシュはゴミ箱にホールインワン。
この酷い花粉症のおかげさまで、
ゴミ箱にティッシュを投げ入れるスキルが上がった。
嬉しくない。
201号室に住む、私、小高那智(こだか なち)。
実家はここよりも田舎で遠い所にある。
遠いけどどうしても通いたい高校に合格して、学校から近いこのアパートで一人暮らしをしている。
もう大分慣れた、このアパートと一人暮らし。
大学生になったら、またこのアパートを出て、また近い所に一人暮らしをして。
そう考えてはいる、けど。
まだ4月。
あと1年もあるんだ。
「ふぁー……眠い………」
だいぶ1人でも、この部屋でなら独り言が気にならなくなってきた。
まあ、いいや。
眠いから、寝よう。
お昼寝、お昼寝。
布団を被って、目を閉じる。
これから後数時間後、
壮絶な出会いがあるなんて、知らず。