黙れ、小高。
202号室。
そう書いてある、鍵を大家さんに貰った。
家具も置いて貰って。
後は大量な段ボールの中身を整理するだけ。
貰った鍵で、ドアを開ける。
気に入ったのは、家賃の安さと、この部屋の間取り。
逆に言えばそれしか気に入っていない。
駅まではなかなか歩かないといけないし。
一番近いコンビニは徒歩10分。
何ともきわどい、何とも言えない微妙さ。
おまけに大家さんはかなりのおしゃべり。
捕まったら負けだな。
さっき鍵を貰ったのがほぼ初めての会話らしい会話だったけど、何となく雰囲気がそうで。
心の中の俺が、『早く逃げろ』って叫んだ。
よっぽどだ。
今年から、大学3年生。
それを兼ねて、バイトで塾講師の採用が決まった。
どうせなら、その塾に近い所に引っ越そう。
それが、この新生活のきっかけ。
『203号室は空室で、201号室には小高さんって人が住んでるから!』
聞いてないのに大家さんは教えてくれた。
隣の部屋にくらい、挨拶するのは礼儀か。
もう少し、落ち着いたら挨拶にいこう。
201号室、お隣の、こだかさん。