28才の初恋
 後悔と自己嫌悪の気持ちで……結局は何も話せないままにタクシー乗り場に着いた。
 タクシー乗り場には、運良くというかツイていないと言うべきか。一台も客待ちのタクシーは停車していなかった。

「あ、ありがとう……後は一人で大丈夫だから」

 大樹クンにお礼を言って、今日のところはお別れを告げようとする。
 そりゃあ、タクシーに乗るまで二人きりで……ずっと一緒にいたいけれど、正直なところこれ以上の迷惑も掛けたくない。
 
……と、思ったのだけど。

「何言ってるんですか、タクシー拾うまで一緒に待ってますよ!」

――大樹クンのそんな優しい言葉に……涙が出た。
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