28才の初恋
「そうだな、何かスッキリとしたいもんだよな」

 私の無言のプレッシャーが通じたのか、さっきよりは少しだけ話題を膨らませた磯野。
 どうやら自分の生命を守るための野生のカンのようなものが働いた模様である。

「ねえ、何か無いもんですかねー」

 大樹クンがそう答える。
 確かに今日の蒸し暑さは、いかに梅雨どきとはいえどちょっと異常だ。
 オヤツに、と買っておいた『フグの白子入りアンパン』が机の中に入れておいただけでカビてしまったほどである。
 大樹クンが度々グチってしまうのも分かる気がする。

「まあ、気候に文句を言っても仕方ないさ」

 大樹クンの愚痴に、書類をトントンと揃えながら答える磯野。
 まあ、正論である。
 
――正論であるが……もっと話を膨らませようとは思わないのか!?
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