28才の初恋
 自分の胸ポケットから、タバコとライターを取り出し、それに火を点ける大樹クン。

――くうっ!やっぱり私もタバコを吸うべきだろうか?

 タバコを吸っていたら、ここで自分のライターで大樹クンのタバコに私が火を点けてあげることができたのに……!!
 やはり、タバコを吸わなくても、こういう時に備えてライターくらいは所持しておこう。

 一口、タバコを吸い込んでから、フゥーっと薄紫色が混じった白い煙を吐き出す大樹クン。
 残念ながら、少し横を向いて、煙が私の方に来ないように配慮されてしまった……本当に残念だ。

 あの煙を袋に詰めて『大樹クンが吸ったタバコの煙』とか言って売り出されたら、一袋が五百円くらいでも喜んで購入してしまいそうな自分が怖い。

「すいません。急に黙っちゃったりして」

 大樹クンが私の方に視線を向けた。
 そして、ポツポツと語り始める――。
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