28才の初恋
 さらに勇気を出してみる。
 ここで出さなければ、一体どこでこのチキンな私が勇気を出せると言うのだ!

「ど、どんな人!?」

 期待する答えは『年上の人なんですよ』とか『俺よりも背が低い人です』とか。
 もう、いっそのこと『課長が好きなんです!』とか言ってくれないかな?

 もしも、そう言ってくれるんだったらさ、婚姻届って深夜でも受け付けてくれるらしいよ?
 
――今から二人で軽く提出しに行かない?

 ああ、答えを聞く前から妄想が止まらない!
 緊張でカラカラになった喉を潤すために、私もピッチャーを握りそのままビールを口の中に流し込む。

 ピッチャーの中身を半分ほど一気に飲み込み、「プッハァー!」という声と共にピッチャーを口から放すのとほぼ同時に……大樹クンが私の質問に答えた――。
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