28才の初恋
「えっと……みんな注文は決まった?」

 何事も無かったように、テーブルの上に置いてあるメニューを手に取る。
 唖然としたような空気なのはきっと気のせい……だと思い込むことにした。

「課長は何に……します?」

 振り絞るような声で、私の横に座った橋本が場を取り繕うように訊ねてくる。みんなの引きつった表情が緩んでいないのは私の被害妄想だと思うことにしよう。

「私はAランチにしようかな? みんなは?」

 私の一言で、みんなはやっと各々メニューを手に取る。
 動作がぎこちないのは、きっとみんな昨夜寝不足だった、と思うことにする。
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