28才の初恋
 大樹クンにとっては、かなり理不尽な質問だろう。
 メールで一方的に呼び出されて、必死に探し出した挙句の言葉である。

 それなのに、大樹クンは少しだけ頭に手を当てて、考えるような素振りを見せた後、何事も無かったように言い放つ。

「そういえばそうですね。あー、でも……梅田って見ただけで駅のどこかで待ってるって勝手に思って……って、課長も電話に出てくれなかったじゃないですか」

 そう言ってから「ハハハ……」と何のわだかまりも無いように笑う。
 そんな大樹クンの笑顔に、私もこの不思議な現象がなぜ起こったのか、追及する気持ちが完全に消えてしまった。

 『会いたい』と思って、こうやって本当に会えてしまったのだ。
 ならば、私がやらないといけないことは決まっている。

 この奇跡に便乗して……大樹クンに告白するのだ!
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