ココロトタマシイ

幻惑の街-南Side-

「…靖ちゃん……今の、なに……?」


「…………」


僕は答えることもできずに。

ただ彼女の消えた空間を、呆然と見つめることしかできなかった。


――……あの時。


僕が鎌を振り上げて。

彼女の魂をいつも通り回収しようとしたら。

彼女の体が金色の光を放った。


あまりの眩しさに目がくらんで、思わず目を腕で覆ってしまったけど。



一瞬、彼女の姿に…。


     ・・・
……―――あいつの姿がみえたような気がした……。


あいつの表情(カオ)はとても哀しそうで。

何かを言いたそうにしていたようにみえた。


「はぁ………」


あいつが一体何を伝えたかったのか、なんて考えても埒が明かない。


それに…そもそもあいつは。




僕を許してはくれない……。




…だろうから。


「靖ちゃん!!」


「う、わ!!
な、なんだよいきなり……」


いつの間にか俯いていた僕の顔を。

ぐいっと覗き込んできたあんりに驚いた。


「いきなりじゃないもん!さっきからずーっと呼んでんのに」


「あーごめん。ちょっと考えごとを……ね」


腰に手を当て、頬を膨らませるあんりを適当に宥めて。

とりあえず鎌をしまう。


「あーあー。
靖ちゃんはぼーっとしてるし、あの娘は逃がしちゃうし……」


「パスタ冷めちゃってたら靖ちゃんのせいなんだからー!」とぼやきながら、あんりも銃をしまう。

そしてあんりは坂道を登り始めた。


「帰るのか?」


「あったり前~。
あとは靖ちゃんがやってよね~」


「……あんり!」


「なにー?」


あんりにもあいつが見えたかどうか、聞こうと思ったけど。

いざ聞こうとなるとやっぱり躊躇いがでる。


「……いや、気をつけて帰れよ」


「?……変な靖ちゃん」


あんりは怪訝そうに眉を潜めながらも、さっさとこの空間から帰って行った。

……自分の住むべき世界へ。


< 16 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop