ココロトタマシイ
あんりが帰ってから、少しぼーっと考えごとをしていたら。

いつの間にか太陽が傾いていて、辺りがオレンジの光に包まれていた。


そろそろ僕も、彼女を探しに行かなくちゃならない。

…妃 美麗。

たしかそんな名前だった彼女を。


「全く…めんどくさい………」


でも、彼女をこのまま生かしておくわけにはいかない。

ため息をつきながらも、後を追うように彼女の消えた空間へ飛び出した。




**********************


………頭がガンガンする。

どうもこの“時空の狭間”は好きになれない。

いろんな記憶やら感情やらが入り交じって、頭に響く。


早くここから出たい気持ちはやまやまだけど。

このたくさんある空間のどこかに彼女がいるはずだ。

意識を集中して彼女の魂を辿る。

すると浮かび上がる一つの空間。

そこに飛び込む。


「……っ!」


なんだ…この世界。

まるで電撃が走ったようにビリビリと皮膚が痛む。

今までにない世界だ。

しかも…。


「ここ……学校……?」


僕が通ってる学校の校門前に着いた。

なにやら教室のほうはガヤガヤと騒がしくて。

・・・・・
本物の世界に似ている。

でも感じる微妙な違和感。


嫌な感じをうけながらも校門を飛び越えて中に入ると。

少し先に一人の女子生徒が見えた。

そいつは僕に気付いたのか、こちらに近付いてくる。

しっかりとした足取りで、向かってくる彼女は。


   ・・・・・・・
まるで生きている感じがしない。



顔が見えるほどまで近付いて、予想は確信に変わった。

…――こいつは、魂が入ってない、体だけの器(うつわ)。

目が虚ろで、色を持っていないのがその証。


「あなた……魂を持っているのね」


「…………」


「ねぇ、その魂。
わたしに頂戴?」


口元だけで微笑む彼女は、人を殺す時のあんりに似ている。


「ねぇ、頂戴……?
あなたの持っている魂……寄越しなさいよぉぉぉ」


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